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2024.02.07

【完全解説】LiDAR SLAMとは?自己位置推定の原理と活用事例3選

活用事例

現代技術の進化がさまざまな革新をもたらす中、LiDAR SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は
未知の可能性を秘めた技術として大きな注目を集めています。

LiDAR SLAMは、LiDARとSLAMの技術を組み合わせた技術で、自己位置の推定と地図の構築を同時に行えるツールです。

またSLAMは、LiDAR以外にもVisual、Depthといった3種類が存在し、それぞれ原理や仕組みも異なります。

そこで本記事では、LiDAR SLAMの基本原理から、SLAMの仕組み、活用事例まで解説します。

LiDAR SLAMの可能性を探り、新しい発見の場にしていただけると幸いです。

INDEX

LiDAR SLAMとは

LiDAR SLAMとは、レーザースキャナーを使用して環境地図の作成と、自己位置の推定を同時に行える技術です。

LiDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれるレーザー光とSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる自己位置推定の技術を組み合わせることで実現します。

LiDAR SLAMは、3種類のSLAMのうちの1種です。
LiDAR SLAMをさらに深く理解するために、まずはSLAMとは何かについて詳しく見ていきましょう。

そもそもSLAMとは

SLAMとは、機械・ロボット・カメラが未知の環境で自己位置を同時に把握し、周囲の地図を構築する技術です。

SLAMの仕組みは簡単です。
カメラやレーザーなどのセンサーで対象物の周りの情報を収集し、その情報をもとに対象物の位置を推定します。
同時に、機械が移動した経路をもとにその環境の地図を構築します。

この自己位置推定と地図作成を同時に行うことで、機械は迷子になることなく、かつ周囲の状況を理解しながら移動できるようになります。

自動運転やドローンなど幅広いシーンで活用され、新しい環境への適応性や正確な位置把握が必要な場面で重要な役割を果たしているのです。

SLAMには3つの種類がある

SLAMには、次の3種類が存在します。

 

1.LiDAR SLAM
2.Visual SLAM
3.Depth SLAM

 

3つとも、自己位置を推定し、地図を生成するという点では共通しています。
一方で、自己位置を推定する方法が異なります。

 

それぞれの原理や仕組みを詳しく見ていきましょう。

SLAMの原理・仕組み

3つのSLAMについて、それぞれ原理・仕組みを解説していきます。

LiDAR SLAMの原理

LiDAR SLAMは、レーザースキャナ(レーザー光)を用いて、対象物までの距離を計測するLiDARと、同時に地図を作成し自己位置を推定するSLAMの組み合わせです。
まず、LiDAR搭載のレーザースキャナで周囲の環境を360度スキャンし、反射光の時間差から距離データを取得します。
このデータをもとに、SLAMが機体の位置をリアルタイムで推定し、同時に地図を作成します。
LiDARは、ほかの計測方法に比べて、非常に高精度に計測できることが強みです。

Visual SLAMの原理

Visual SLAMは、カメラなどの視覚センサーを利用して環境を捉え、同時に位置推定と地図構築を行います。カメラが周囲を撮影し、その画像から特徴的なポイントを抽出して連続的にデータをつなぎ合わせます。

これにより、カメラの移動と同時に環境の地図が構築され、同時に自己位置も更新されます。
LiDARに比べると、スキャンの精度は下がります。

ただし、Visual SLAMは視覚情報を基にしているため、屋内やGPSが利用できない場所では有利に機能するでしょう。
Visual SLAMの代表的な機器には、ドローンが挙げられます。

Depth SLAMの原理

Depth SLAMは、Depthセンサー(深度センサー)を使用して物体までの距離情報を得ています。
深度センサーは、物体の三次元的な形状まで捉えられるので、正確な位置推定と地図構築を行えます。

DepthセンサーはデブスカメラやToF(Time-of-Flight)カメラなどが使用されることが多いです。
LiDARや視覚センサーと組み合わせてより詳細で緻密な地図を生成できます。
Depth SLAMは、カメラで認識できる特徴が少ないエリアや暗闇での活用にも向いています。

LiDAR SLAMのメリット・デメリット

LiDAR SLAMを利用するメリットとデメリットについて解説します。
導入の際は、ぜひメリットだけでなくデメリットも意識した上で検討してみてください。

メリット

LiDAR SLAMのメリットは、多岐に渡りますが、代表的なものには次の2点があげられます。

 

・非常に高精度な自己位置推定が可能
・夜間や悪天候下など明るさに左右されず使用できる

 

LiDARは、レーザー光が跳ね返ってくる時間をもとに計測するため、どのような環境でも比較的使いやすいのが特徴です。また細かい箇所の特徴を捉えるのも得意なため、高い解像度が求められるシーンにも向いているでしょう。

デメリット

一方で、LiDAR SLAMのデメリットとして、LiDARセンサー自体が比較的高額であることが挙げられます。LiDARのコストが高いことで、システム全体のコストが押し上げられてしまうことはデメリットの一つでしょう。また、LiDARを有効活用するには、複雑なアルゴリズムや専門知識・開発技術が求められるケースも多いです。
本格的にLiDARを活用するのであれば、社内で専門知識のあるメンバーを確保しておくことも重要でしょう。

LiDAR SLAMの活用事例3選

LiDAR SLAMの活用について、下記の3つの事例をご紹介します。

 

1.測量・現地調査
2.自立走行実験
3.道路付属物の閲覧

 

一つずつ見ていくので、自社のプロジェクトに近いものをぜひ参考にしてみてください。

1.測量・現地調査
サンフランシスコに本拠を置く建設会社スウィナートン様は、3Dレーザースキャナーを使用して、約2,000㎡の空間データを数時間で作成したといいます。

新型コロナウイルスの影響で、建設現場へのアクセスが制限されており、プロジェクトが行き詰まっていた際の対策として取り入れたのが3Dスキャンだったそうです。

使用したのは、3Dレーザースキャナーの「Matterport」。
スキャンしたデータは、クライアント・建築家・エンジニアに共有し、ほぼリアルタイムでプロジェクトの進捗を報告しています。

その結果、4週間のプロジェクト遅延の可能性を排除し、また移動コストも半分に抑えられたそうです。

デジタル技術の導入は、業務効率の改善や品質向上など多くのメリットがあることがわかります。

■本事例で使用されたMatterportの詳細はこちらから

 

参考:https://matterport.com/ja/learn/digital-twin/construction

2.自律走行実験

北陽電機株式会社様が開催協力している中之島チャレンジにおいて、LiDARによる自律走行実験が行われました。

中之島チャレンジとは、大阪にある中之島公園の歩行者天国エリアで、ロボットを自立走行させるチャレンジです。
コース環境をデータにすることで、人流・ごみ発見・ごみ回収などの課題解決を目指しています。

計測には、3D測域センサ(LiDAR)YVT-35LX、屋外対応の小型2D測域センサURM-40LC-EWが使用されました。

ロボットを走行させ、その周辺環境を測定しています。
人物の形や、縁石・壁の形状など、さまざまな対象物がはっきり映し出されていました。

 

参考:https://www.youtube.com/watch?v=qlFmQQd9BwM

3.道路付属物の閲覧

株式会社小林コンサルタント様の事例でも「効率的な3次元計測を活用した現況基盤データの取得」を目的に、道路付属物の閲覧をLiDAR SLAMで行っています。

検証の目的は「道路下にあるBOXや法留構造物をSLAM技術を活用した3次元レーザー計測機器を活用して計測することで、どの程度の作業効率を図れるか、また、計画機関で想定
品質、精度の確保が可能であるか」ということです。
(引用:P7 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/_pdf/shingijutsu_shizuoka%20wg01_teian02.pdf

計測したデータは、将来異常変状が発生した場合の従来把握や経年変化の検出に活用されます。

 

参考:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/_pdf/shingijutsu_shizuoka%20wg01_teian02.pdf

LiDAR SLAMでより高精度な自己位置推定が可能に!

LiDAR SLAMは、LiDARとSLAMの技術を組み合わせることで、自己位置を推定し、地図を構築する画期的な技術です。
LiDAR SLAMのメリットには、高い精度での位置推定や環境認識、夜間や悪天候下でも頼りになるセンサーといった特長があります。

一方で、高価なLiDARセンサーやシステムの開発における専門知識の必要性、重さやサイズの課題が存在します。

SLAM技術は、自動運転車やドローン、ロボットなどさまざまな分野での応用が期待され、未知の可能性への鍵を握る存在となるでしょう。

 

Matterportは、LiDAR SLAM技術を実現した最先端のデジタルテクノロジーです。
建設現場の測量・現地調査をはじめとした、さまざまなシーンで業務効率や品質改善を可能にします。

Matterportに関するお問い合わせは、ぜひお気軽にご相談ください。